第3回女性の睡眠WG開催のご報告

「睡眠から、人と社会を健やかに。」をキャッチフレーズに、睡眠に関する科学的根拠に基づいた情報の提供と具体的な施策の提案を行うことで、人々の睡眠を、より良いものにし、人と社会を健やかにしていくための活動を推進する一般社団法人日本睡眠協会(理事長:内村直尚、東京都文京区本郷、以下「JSLEEP」)は、2025年 5月8日、WGのうち、女性の健康と睡眠とのあいだの関係を分析・解明していく女性の睡眠ワーキンググループ(座長:八木朝子(久留米大学医学部医療検査学科准教授)、以下「女性WG」)の第3回会合を開催しました。

20240508女性WG③駒田先生1

 当日は駒田陽子先生(東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院 教授、日本睡眠学会幹事、日本時間生物学会理事)から「女性のライフステージと睡眠」と題してお話をいただきました。駒田先生のお話の概要は以下のとおりです。



駒田陽子先生プロフィール
東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院 教授、日本睡眠学会幹事、日本時間生物学会理事、Sleep and Biological Rhytyms Associate Editor。専門は睡眠学、時間生物学、健康科学。早稲田大学第一文学部哲学科卒業、同大学院人間科学研究科生命科学専攻修了。博士(人間科学)。東京医科大学睡眠学
講座准教授、明治薬科大学薬学部准教授などを経て、 2022年4月から現職。

1.睡眠ガイド2023と女性の視点

国の啓発にもかかわらず日本人の睡眠状況が改善されないことから、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が発表され、年代別の推奨事項がまとめられた。その中で、女性特有のライフイベント(月経・妊娠・出産・更年期)に関するパートも設けられた。ここでは、女性の問題は女性が解決するといった形で捉えられないようにするなど気を配った。

2. 睡眠の国際比較とジェンダーギャップ

世界(OECD加盟国)の中で日本人の睡眠時間は最も短い。特に女性の睡眠時間は男性よりも短く、文化的背景や家事・育児・介護といった無償労働の偏りが影響している。男女差は縮小してきており、今年また調査が行われるだろうが、もう男女差はなくなるか、他国と同様女性が長くなるのでは、と期待する。育児休業や介護負担、家事時間などでも男性との差は依然大きく、これが女性の睡眠を奪っている。

3.生物学的要因:月経周期と睡眠

女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は月経周期に応じて変動し、体温や睡眠覚醒リズムに影響する。特に月経前の黄体期には深部体温の下落幅が小さいため日中の眠気が強まる。月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)は精神的・身体的不調を引き起こし、女性のQOLや学校・職場での活動にも影響する。

4. 対応策:月経周期に応じた生活や仕事の調整や婦人科の活用

月経周期に応じて生活や仕事を調整すること、かかりつけ婦人科の活用、薬物療法(鎮痛剤・ピル等)や生活習慣改善が重要。自分の体を知り、予防的に十分な睡眠を確保することも不調の軽減に有効。

5. 妊娠と睡眠

妊娠中はホルモンの変化や身体の変化(頻尿・胎動・こむら返りなど)により睡眠が悪化しやすい。また、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群のリスクも増加する。妊娠中の不眠は産後うつや赤ちゃんの気質にも影響しうるため、妊娠初期からの睡眠支援が重要。カフェイン制限や睡眠環境改善(抱き枕など)も有効。

6. 育児-赤ちゃんと母親の睡眠

赤ちゃんの夜泣き対応で母親の睡眠は断続的になりがち。授乳やお世話は可能な限り夜間環境を静かに保ち、また昼夜のリズムを育てることで赤ちゃんも早く夜に眠れるようになる。夜泣きしてもしばらく様子をみるとそのまま眠りにつくこともある。母親へのサポートとしては、「眠れないのは当然」と放置せず、休息時間確保を社会的に支援する必要がある。

7.更年期と睡眠

閉経前後の10年間を更年期とし、ホルモン分泌の急変による不眠、のぼせ、発汗、不安、鬱、睡眠時無呼吸症候群などが発生する。40%の女性がこの時期に不眠を訴えるとされる。生活リズムを整え、運動や食事など生活改善すること、これには周囲の支援が必要。また、薬物療法(睡眠薬、漢方薬、ホルモン補充療法など)が対処方法として考え得る。

8. まとめ

睡眠問題は女性だけの課題ではなく、社会全体で支えるべき課題である。体内時計を整える生活(朝は光を浴び、夜は暗く、規則的な食事・運動)を推奨し、年代・ライフステージごとに適切な対応を行うことが、心身の健康維持に繋がる。

以上のような駒田先生のお話に現地・オンライン含め約70名のご出席者が熱心に耳を傾け、質疑応答も含め女性のライフステージと睡眠について理解を深めることができました。

今後、本WGでは女性の睡眠について引き続きテーマ別に座学形式の勉強をして参ります。次回については追って当協会HPなどでお知らせ致します。ご関心を持たれましたら随時事務局(下記連絡先)までご連絡ください。

【協会概要】
一般社団法人日本睡眠協会
理事長 内村直尚
設立日:2023年7月20日
事務所所在地:東京都文京区本郷六丁目25番14号宗文館ビル3階
HP       :https://jsleep.org/
X(旧Twitter): https://x.com/jsleeporg
Facebook   : https://www.facebook.com/profile.php?id=61573164333553&locale=ja_JP

本件に関するお問い合わせ先
日本睡眠協会事務局 contact@jsleep.org

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