春の睡眠の日特別セミナー開催のご報告

「睡眠から、人と社会を健やかに。」をキャッチフレーズに、睡眠に関する科学的根拠に基づいた情報の提供と具体的な施策の提案を行うことで、人々の睡眠を、より良いものにし、人と社会を健やかにしていくための活動を推進する一般社団法人日本睡眠協会(理事長:内村直尚、東京都文京区本郷、以下「JSLEEP」)は、2024年 3 月8日(金)に「春の睡眠の日特別セミナー」をTKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)において開催し、当日は現地50名、オンラインで30名を超えるご出席を賜りました。

1.「【健康づくりのための睡眠ガイド】の解説」 内村 直尚 日本睡眠協会理事長

まず、当協会理事長の内村直尚(久留米大学学長、日本睡眠学会理事長、厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」座長)から「【健康づくりのための睡眠ガイド】の解説」と題して先日厚生労働省がとりまとめ、公表した「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(以下「睡眠ガイド」)についてご説明しました。

【概要】

  • 健康日本21(第2次)において、睡眠の質確保(睡眠休養感)に関する目標が未達である等の理由から、概ね10年に一度改定される「睡眠指針」が改定される形で「睡眠ガイド」がとりまとめられた
  • 今回の改訂では、①成人、②子ども、③高齢者という年代別の区分で一定のエビデンスのある情報として推奨事項を提示した。ポイントは、①成人(働く人)→ 6時間以上の睡眠時間を確保する、②高齢者→ 8時間以上、寝床で過ごさない、の2点
  • 本ガイドは生活指導の実施者(保健師、管理栄養士、医師等)、政策立案者(健康増進部門、まちづくり部門等)、職場管理者、その他健康・医療・介護分野の関係者に民間企業や教育機関等の関係者と連携して活用していただきたい
  • 「睡眠ガイド2023」を実践しても十分な時間眠れない、睡眠で休養感が得られない、日中の眠気が強い場合は睡眠障害が潜んでいる可能性がある
    こうしたことから、ウェアラブルなどの簡易機器により睡眠を計測し可視化し、睡眠健診や睡眠科の標榜などの仕組みを実現する必要があり、当協会としてもバックアップしていく                                                                  等

 



内村直尚先生プロフィール
当協会理事長、久留米大学学長、日本睡眠学会 理事長
1981年に日本初めての睡眠障害専門外来を開設し、リーダーとして牽引してきた睡眠障害のエキスパート
「地域に貢献できる臨床家の育成」を自らに課せられた役割だとし、現場に強い医師を多く育成してきた。

2.「日本人の健康と睡眠について」 横倉 義武 日本睡眠協会顧問

次に、当協会の顧問をお引き受けいただいている日本医師会名誉会長、世界医師会名誉会長の横倉義武先生から「日本人の健康と睡眠」と題してご講話をいただきました。

【概要】

  • 日本は平均寿命も健康寿命でも世界一だが、高齢化社会に向かう中で健康づくりの活動も頑張らねばということで日本健康会議を立ち上げ、運動を広げた。目標達成以降も継続してほしいという要望があり更に活動を続け現在に至る
  • 2011年にLancet誌が「日本の寿命が世界一なのはなぜか」という分析をした。その中で日本人は高血圧が多く、そのため①生活習慣改善の取組をしたこと、そして②国民皆保険制度により降圧剤の投入がしやすくなり血圧がコントロールできるようになったことがその理由とされた
  • 我が国の死因のうち、循環器病は足し合わせるとがんに匹敵し、その対策は非常に重要である。生活習慣病予防にメタボ健診などひとつひとつ対策がとられていく中で、以前は余り注目されてこなかった睡眠が実は非常に大きな要因だとわかってきた
  • 若い世代の死因で一番多いのが自殺だが、その9割近くが何らかの精神疾患を持ち、うつ病が非常に多い。静岡のうつ自殺予防対策「富士モデル」では、娘さんがお父さんに「ゆっくり休みましょう」と問いかけることで自殺率が下がり注目されたが、そこにも睡眠の問題があった
  • 睡眠の問題は睡眠習慣(体内時計)と睡眠障害(睡眠時無呼吸や不眠症など)の問題に分けられるが、睡眠障害は生活習慣病に直結しておりその重要性がわかる。
  • 生活習慣病予防には、今まで食生活と運動が強調されてきたが、それに加えて更に睡眠も重要で、健康づくりのリーダーの皆様には是非それを広めていただきたい



横倉義武先生プロフィール
日本医師会名誉会長、第19代日本医師会会長、第68代世界医師会会長
弘恵会ヨコクラ病院(福岡)院長、理事長として永年にわたり地域住民の予防・治療・健康増進と生活向上に尽力。
日本医師会会長として、新型コロナウイルス感染症の感染者が国内で初めて確認されて以降、混乱野中で同会長として全国17万人余りの医師の先頭に立ち、強いリーダーシップを発揮し、国民に必要な医療提供体制を維持・継続することに多大な貢献をした。また、第68代世界医師会会長として、SDGsのひとつ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを、日本の国民皆保険の経験を元にグローバルなレベルでその推進活動に大きく貢献した。

3.日本睡眠協会について(活動内容のご報告など)

①「日本睡眠協会の活動について」 宮原 禎 日本睡眠協会事務局長

次に、日本睡眠協会の活動状況について、当協会事務局長の宮原禎よりご説明いたしました。

【概要】

  • 日本睡眠協会は、内村理事長はじめと理事の皆様のご尽力の下、①睡眠に関する科学的根拠の提示、②睡眠予防・医療に関する情報の発信、③睡眠予防・医療施策の推進の3つのミッションを果たすべく、アカデミアの先生方から科学的根拠をいただき、それについて地域社会や産業界とキャッチボールをしながら、立法府、行政府に対する政策提言や社会への情報発信に取り組んでいる
  • ワーキンググループ(以下「WG」)の活動について紹介したい。生活習慣病と睡眠WGは健康保険組合にもご参画いただきながら進めている。来る3月22日に次回会合を予定しているのでご関心のある方は事務局までお気軽にご連絡をいただきたい。
  • 生活習慣病WGでは座長で当協会理事の陳和夫先生のお話をお聞きいただける。前回印象的だったのは血糖値の上昇下降が睡眠をとれているかどうかで結構変わるんだという点で、健保の皆様には興味深いお話だったと思う。このように医療界では常識でも一般社会にはまだまだ浸透していないことも多く、そのあたりの橋渡しが我々の使命である
  • 子どもの睡眠WGは自治体を中心にご関心をお寄せいただいている。この分野は課題が多くまだまだ議論すべきことが多い。こちらは次回は5月9日に原浩貴先生に「子どもの睡眠障害」(仮)をテーマにお話をいただくので、生活習慣病WG同様ご関心があれば事務局までご連絡をお願いしたい
  • こうした各WGは1回あたり30名ほどの皆様にお集まりいただき、活発な議論を展開する、といった絵姿を目指していく
  • 医療機関による睡眠科標榜については内村先生からも言及があったが、当協会では(需要側=患者側の)ニーズ調査という形でサポートをさせていただいた。実現すれば睡眠に悩む人の医療アクセスを改善し手を差し伸べることになると考えている
  • 今回のようなセミナーについては、次回は秋の睡眠の日(9月3日)あたりを予定している。半年に一度くらい発表の場を設けさせていただき、WGの活動などもご報告しながら少しずつ輪を広げていくような形にしたい
  • ちなみに本日(3月8日)は「女性の健康週間」の最終日であり、かつ国際女性デーであるが、「女性の健康と睡眠」という新しい、世の中が求めているようなアジェンダにも取り組みながら、今後とも少しずつ協会の活動を広げて参りたい

②「日本の睡眠課題に対する当社の活動」

   堀 清貴 株式会社ジンズ ヘルスケア事業部シニアディレクター

最後に、当協会の賛助会員である株式会社ジンズの、新規事業本部ヘルスケア事業部シニアディレクターの堀清貴様より「日本の睡眠課題に対する当社の活動」ということで同社の睡眠に関する取組についてご説明いただきました。

  • 去る2月22日に「JINS SCREEEN FOR SLEEP」というブルーライトカットメガネを、睡眠に適したフレームで発売させていただいた。フレームが3種類あり横になっても顔に優しく、ブルーライトカット率は40%ということでお客様には睡眠の2-3時間前から装着することをお勧めしている
  • 発売に至った経緯として、我々が睡眠に参入した理由をお話する。今までのお話にもあったとおり日本人の睡眠時間は先進国の中で最も短く、それが経済損失、生活習慣病、子どもの高次脳機能につながる
  • 実は当社はかねてより「光」と「眼」に向き合ってきた企業である。2011年に「JINS PC」というブルーライトカットメガネを発売した。当時メガネは度入りで眼の悪い人がかけるものだったが、度なしでかける習慣ができ社会現象になった。当時弊社はブルーライトカットの有用性についてアカデミアの先生方とエビデンスに基づいて機能性眼鏡を啓発してきた
  • そしてブルーライトだけでなく、昨今眼科の先生方の取組で太陽光の中でバイオレットライトも近視に影響があるのではないか、ということで光を透過するバイオレットグラスというレンズやバイオレットライトを発光する眼鏡をパートナー企業と今後医療機器としての開発にチャレンジしている
  • 2019年に研究課題として子どもに対してブルーライトカットがよいのかどうか、という疑問に対して睡眠の専門家であるスタンフォード大学の西野精治先生や日本睡眠学会副理事長の千葉伸太郎先生に研究をお願いした。先日プレスリリースでも発表したが、10~12歳の男の子にブルーライトカット40%のメガネをかける、かけないでクロスオーバーで実験を行い、2週間ほどでメラトニンやアクチグラフで睡眠のタイミングやイライラなど気分を確認した
  • メラトニンの方は残念ながら有意差は出なかったが、入眠のタイミングが早くなった。また、兄弟や友人への暴言などのイライラが減ったといった効果があった。そもそも子どもに対する睡眠に対するエビデンスが少ないと言われている中でこういった研究成果を出していただいたことに、研究を実施いただいた先生方に感謝している。メディアにも取り上げていただき、世の中の睡眠課題に関心が広がっていることを実感した
  • 弊社のビジョンは”Magnify Life”、人々の人生をも拡大し、豊かにしたいということ。ただ、眼鏡を販売するのではなく、ヘルスルケアを通じて社会に貢献していきたいと考えている。これからも社会課題に向き合っていきたいと思うが、睡眠課題に関しては企業として商品を通じて、アカデミアの先生方にご協力いただきながらエビデンスベースで啓発していけたらと思っている
  • 日本睡眠協会には、企業が参画できる機会をいただいたことは有難く思っており、今後ともにできることを一緒に考え、ともに睡眠の課題啓発に取り組んでいけたらと思っている

セミナー終了後には出席者の皆様同士、またはJSLEEP役員や事務局との懇親を深めていただく懇親会を開催しました。

当日は現地50名、オンラインも30名を超える方々に熱心に耳を傾けていただき、質疑も通して「睡眠ガイド」や睡眠の重要性についてあらためて認識を深めることができたと考えております。

上記のとおり、当協会では3月22日に生活習慣病WGを開催、5月9日(⇒6月14日に変更)には子どもWGを開催する予定です。また、9月3日の秋の睡眠の日には今回のセミナーのようなイベントの開催を予定しております。ご関心をお持ちになった方は随時JSLEEP事務局(下記連絡先)までご連絡ください。

【協会概要】
一般社団法人日本睡眠協会
理事長 内村直尚
設立日:2023年7月20日
事務所所在地:東京都文京区本郷六丁目25番14号宗文館ビル3階
HP:https://jsleep.org/

本件に関するお問い合わせ先
日本睡眠協会事務局 contact@jsleep.org

 

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